物流統括管理者(CLO)とは?選任要件と対象企業の判定基準

2026年4月、一定規模以上の荷主企業に対して、物流統括管理者(CLO)の選任が義務化されました。対象は、年間の取扱貨物量が9万トン以上の「特定荷主」と、複数の加盟店を束ねる「特定連鎖化事業者」です。ただし、この算定には対象貨物の範囲など法令で定められた基準があるため、単純な貨物量の合計だけでは正確な判断ができません。

本記事では、物流統括管理者(CLO)の役割をはじめ、対象企業の判定基準や人選のポイント、具体的な提出スケジュール、未選任時のリスクまで、担当者が知るべき実務の全容を解説します。

目次

物流統括管理者とは?

物流統括管理者とは、2026年4月施行の物流効率化法に基づき、一定規模以上の荷主企業に選任が義務づけられた役職です。単なる肩書ではなく、事業運営上の重要な決定に参画できる立場であることが法律で求められています。
ここでは、この制度が設けられた背景と、一般的な役職である「CLO」との違いについて解説します。

選任が義務化された背景

義務化の背景にあるのは、トラックドライバーの労働時間規制が強化された、いわゆる「2024年問題」です。輸送力不足への懸念から、荷主と物流事業者が協力して物流を効率化する必要が生じました。

この流れを受けて関連法が2段階で施行され、2025年4月の努力義務化を経て、2026年4月には一定規模以上の事業者を対象とした義務化が始まりました。国は2030年度(令和12年度)までに、荷待ちや荷役にかかる時間を年間125時間短縮し、積載効率を44%まで高めるという数値目標を掲げています。

「CLO」と「物流統括管理者」の違い

CLO(ChiefLogisticsOfficer)は、欧米企業を中心に定着してきた役職です。CFOやCOOと並ぶ経営層の一角として、企業全体のロジスティクス戦略を統括する立場を指します。JIS規格(JISZ0111)では、物流を輸送や保管といった機能として定義する一方で、ロジスティクスは需要と供給を適正化する経営管理そのものと位置づけています。CLOは、この経営管理を担う役職です。

すでに社内で「CLO」を役職名として使っている企業も見られます。しかし、社内呼称としてのCLOと、法律が定める物流統括管理者が、必ずしも同じ職務を指すとは限りません。

一般的なCLOの役割は、法律上の要件よりも広範です。そのため、既存のCLOをそのまま法的な物流統括管理者として選任できるかどうかは、個別の職務内容を確認する必要があります。

特定荷主になる基準とは?年間9万トンの計算と確認手順

自社が対象かどうかは、法令で定められた算定方法に基づいて、年間の取扱貨物量を計算することで判断します。

ここでは、対象となる区分の考え方をはじめ、自社における数値の集計方法や、確認後に必要な対応について順を追って解説します。

第一種・第二種荷主の違い

第一種荷主と第二種荷主のいずれも、特定荷主の判定基準は年間貨物量9万トンです。2つの区分を合算するのではなく、それぞれ独立して9万トン以上になるかを確認します。一方が基準を満たせばその区分で指定され、両方満たす場合は両方の指定を受ける仕組みです。

各区分の定義は以下のとおりです。第一種荷主は、自らの事業に関して継続的に運送契約を結ぶ者であり、主に貨物を送り出す側の発荷主を指します。第二種荷主は、運送契約を結ばずにドライバーと貨物の受け渡しを継続して行う者であり、主に貨物を受け取る側の着荷主です。

買い手が自ら運送事業者を手配して仕入先へ引き取りに行く「引取物流」の場合、運送を手配している買い手が第一種荷主に相当します。そのため自社の物流実態を把握し、両方の区分に該当する可能性がないかを確認することが重要です。

2つの区分の判定目安は以下のとおりです。

第一種荷主運送事業者と継続的に運送契約を結んでいるか(主に発荷主)
第二種荷主運送契約はないが、継続してドライバーと貨物の受け渡しを行っているか(主に着荷主)

年間取扱貨物量を算出する8つの換算方法

重量の算定にあたっては、まず自社にある実測値や管理データを確認します。配送記録や請求書などの既存資料から数字を拾える場合は、それをそのまま活用可能です。実測が難しい部分のみ換算や按分などの方法を検討することで、算定の負担軽減につながります。

算定の対象となるのは、各年度(4月から翌年3月まで)の合計貨物重量です。原則として、自社の全事業で扱うすべての商品・資材が算定の対象に含まれます。算定方法は以下の8つが規定されており、複数を組み合わせて合算することも認められています。

  • 実測
  • 単位数量当たりの重量×数量
  • 容積換算(1m³=280kg)
  • 最大積載量または平均積載量×台数
  • 売上額または仕入額÷単位重量当たりの額
  • 第一種・第二種相互のみなし
  • 契約上の重量
  • その他適切と認められる方法

容積換算(3)の参考値は、1立方メートルあたり280kgです。また、「単位重量当たりの額(5)」では、国土交通省が実施する物流センサスの出荷原単位を参照できます。

一方、集計から除外できる対象は以下の4種類に限定されています。

  • 郵便物・信書便物
  • 特別宅配貨物(1個30kg以内。第一種荷主は同時受け渡し合計150kg未満、第二種荷主は合計重量を問わず除外可能)
  • 軽量な資材・事務用品(対象貨物重量合計の1%程度まで)
  • パレット等の輸送用器具

除外できるのは上記の条件を満たしたものだけであり、「ほとんどが小さな荷物だから除外できる」というケースはまれです。そのため、対象範囲を慎重に確認する必要があります。

算定作業を効率よく進めるためのツールも公開されており、日本ロジスティクスシステム協会の「荷主企業の売上高から物流量を推計する方法」は、売上規模から9万トンに相当するかの大まかな見当をつけるのに役立ちます。また、経済産業省の「重量算定フォーマット」は、各算定方法に沿って実際の数字を入力でき、算定作業そのものを補助するツールです。

基準(9万トン)を超過した場合の手続き

特定荷主の判定は自己申告制です。基準以上になった事実を行政が通知してくれるわけではないため、自社の年間貨物重量が9万トン以上かどうかは、事業者自身が把握したうえで届け出る必要があります。

基準重量以上になった年度の翌年度5月末までに、「貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書」を提出します。この届出が必要なのは、初めて基準重量を上回った年度の翌年度のみであり、指定後における毎年度の届出は不要です。

一方、貨物量が基準を下回り、再び基準以上になる見込みがないと明らかに認められる場合は、指定を解除できます。この場合は、「特定荷主指定取消申出書」を提出します。

自社で押さえておくべきなのは、第一種・第二種それぞれの年間取扱貨物重量と、その数値が9万トンの基準に達しているかどうかという点です。

物流統括管理者の業務内容と期待される役割

物流統括管理者の仕事は、法律が定める最低限の業務と、経営層が実際に期待する役割の2つに大別されます。誰を選任するかを検討する前に、まずはそれぞれの内容を確認します。

物流統括管理者が担う法律上の「7つの業務」

法律が物流統括管理者に課す業務は、以下の7項目です。

  • 中長期計画書の作成
  • 事業の運営方針と社内管理体制の整備(ドライバーの負担軽減や荷物の集中回避など)
  • 定期報告書の作成(提出時期は「いつ何を出すか」の章で解説します)
  • 関係部門間の連携体制構築と、物流効率化に向けた従業員の意識向上
  • 情報処理システムや設備の整備、データ等の標準化に関する計画の作成・実施・評価
  • 物流効率化に向けた取引先など関係者との連携・調整
  • 行政からの報告徴収への対応(特定荷主の指定・取り消しや勧告・命令に関わるもの)

これらの項目から、机上の書類作成にとどまらない広範な業務が含まれていることが分かります。特に「部門間の連携体制構築(4)」や「取引先との連携・調整(6)」には、社内外を巻き込む調整力が不可欠です。前章で触れた「管理的地位」という選任要件は、こうした業務の性質と深く関係しています。

経営視点で求められる「部門横断の調整力」

3省(経産省・国交省・農水省)共同の手引書は、物流統括管理者を「会社の経営戦略として物流を担う責任者」と位置づけています。単なる物流部門の長とは、役割の次元が異なります。

必要なのは、物流部門だけで完結しない課題に対し、経営目線で関与することです。たとえば、商品の仕様変更に伴う荷姿の変更や、調達リードタイムの見直しなどが挙げられます。営業が取り決める納期条件も、物流部門が単独で変更できるものではありません。開発や調達、営業といった部門を横断して調整できる立場だからこそ、動かせる領域です。

一言で表すなら、「物流の実務責任者ではなく、物流を経営マターとして動かす責任者」だといえます。次の章で「誰を選ぶか」の要件を確認する際、この認識を持っておくことで、自社における人選の判断軸がより明確になります。

物流統括管理者の人選基準

法令は特定の役職を指定するのではなく、選任する人物が満たすべき要件を定めています。そのため、「自社の誰であれば要件を満たすか」については、各企業が自ら判断しなければなりません。

判断の材料となるのは、主に以下の3点です。第一に「管理的地位」をどこで線引きするか、第二に兼任や他社との共有が認められるか、第三にどの程度の知見が求められるかという基準です。

選任要件となる「管理的地位」の考え方

法令では、物流統括管理者の要件を「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」と規定しています。役員や執行役員といった経営幹部クラスを想定しているものの、特定の役職名には限定していません。重要なのは役職名ではなく、経営の重要な意思決定に実質的に参画しているという事実です。

物流部長を選任する場合、単なる部門長という立場だけでは、要件を満たすかどうかが曖昧になりがちです。部門内の意思決定にとどまらず、経営会議への参加権限や全社的な決裁権限が実際に付与されているかどうかが問われます。こうした実質的な権限の有無が、適切な人材を選ぶ際の重要な判断基準です。

グループ会社や他役職との兼務ルール

グループ会社など複数の法人でそれぞれ指定を受けた場合、1人の人物が各社の物流統括管理者を兼務することは可能ですが、兼任する各社に該当する幹部が籍を置いていることが条件です。

第一種荷主と第二種荷主の両方で指定を受けた場合や、連鎖化事業者(フランチャイズ本部など)と荷主の両方に該当するケースでも考え方は同様です。1つの企業で物流統括管理者を複数人選出するのではなく、同一の人物を充てる必要があります。

他の役員業務との兼任についても、法令上に明確な禁止規定はありません。ただし、問われるのは肩書の数ではなく、物流関連の重要な経営決定に実質的に関与できる時間と権限が確保されているかという点です。複数の業務を抱えていても、必要な時間と権限が担保されていれば要件を満たします。

経営視点に加えて重視したい「デジタルの知見」

人選において、もう1つ重要な視点が存在します。物流統括管理者が管轄する業務には、情報処理システムの整備やデータの標準化も含まれるため、人材を選出する際はデジタルの知見も重視すべきだといえます。

現場における物流実務の理解は、当然ながら欠かせません。そのうえで、経営的視点とデジタル活用の両面に目配りできる人物が理想的です。

結局のところ、適切な人材を選ぶための基準は「役職の名称よりも、経営的な意思決定へ実質的に関与できる権限があるかどうか」に尽きます。

特定荷主の届出と物流統括管理者に関する提出期限

物流統括管理者に関する手続きは、大きく分けて4つあります。提出先や様式、期限がそれぞれ異なるため、まとめて整理しておくことで実務をスムーズに進められます。

最初の手続きは、特定荷主の指定を受けるための届出です。前年度の委託貨物量が基準(9万トン)以上になった場合、翌年度5月末までに「貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書」を提出します。この手続きは初回のみであり、翌年以降は繰り返す必要がありません。

物流統括管理者の選任・届出は、特定荷主の指定を受けたあとに「速やかに」「遅滞なく」行うことが法令上の要件です。「指定後〇月末まで」という情報を見かけることもありますが、法令上に明確な日付は定められていません。あくまで「速やかに」「遅滞なく」が基準です。確定した期日ではない点に注意し、正しい情報に基づいて判断する必要があります。

中長期計画書の提出期限は、指定を受けた年度の7月末までです。ただし2026年度に指定を受けた場合に限り、10月末まで期限が延長される特例があります。計画の対象期間は最長5年間です。記載内容に変更がなければ、計画期間ごとに1度提出するだけで足ります。

定期報告書については、指定を受けた年度の翌年度から、毎年7月末までに提出しなければなりません。

これら4つの手続きを時間軸でまとめると、以下のとおりです。

手続き提出期限頻度
貨物の運送委託・受渡しの状況届出書基準以上になった年度の翌年度5月末まで初回のみ
物流統括管理者の選任・届出指定後、速やかに・遅滞なく(確定期日なし)選任・変更のつど
中長期計画書指定年度の7月末まで(2026年度のみ10月末)計画期間ごとに1度
定期報告書指定翌年度から毎年7月末まで毎年

各手続きの具体的な日付は、「自社が基準を上回った年度はいつか」を起点として決定します。届出(5月末)、中長期計画(7月末または10月末)、定期報告(7月末)という3つの期限に加え、選任も速やかに対応する必要があります。これら4つのスケジュールを社内で事前に共有しておくことが、対応漏れを防ぐための確実な方法です。

【罰則あり】物流統括管理者の未選任リスクと行政措置のフロー

義務に違反した場合の処分は、段階を追って重くなる仕組みです。いきなり罰金が科されるわけではありません。まずは行政からの指導や勧告を受け、それでも改善が見られない場合に次の措置へと移行します。

しかし、決して放置してよいわけではありません。法令では、一定の違反行為に対して直接罰金を定めています。そのため、対応を先送りするほど企業のリスクは高まります。どのような行為がどの程度の処分につながるのか、順を追って解説します。

報告徴収から命令に至る行政措置の手続き

法令では、「勧告」「公表」「命令」という順序で行政措置が規定されています。

「報告徴収」は、正式な処分とは性格の異なる手続きです。勧告や命令を出す前に、行政が事業者の実態を把握する目的で使用します。報告を求められた時点で、すでに行政から注視されている状況であるため、決して軽視できません。

以下の表では比較のために報告徴収も記載していますが、正式な処分の3段階(勧告、公表、命令)には含まれません。

段階内容前置される手続き
報告徴収行政が事業者に報告や資料の提出を求めるなし(判断材料の収集手段)
勧告義務を果たすよう行政が促すなし
公表勧告に従わない場合、その事実を公にする勧告への不対応
命令必要な措置をとるよう行政が命じる審議会等の意見聴取

命令を下すまでには、第三者の意見を挟む「審議会等の意見聴取」を経る必要があるため、手続きの重みが増します。とはいえ、公表の段階に至るだけでも社名が明かされるため、企業が受ける社会的ダメージは甚大です。

担当者だけでなく会社全体に責任が及ぶ「両罰規定」

罰則は、違反の種類に応じて3つの水準に分類されています。

違反の種類罰則の水準主な対象行為
義務の中核にあたる違反100万円以下の罰金物流統括管理者の未選任、行政からの命令に対する違反
手続き面の違反50万円以下の罰金中長期計画の未提出、定期報告の未提出や虚偽記載、報告徴収の拒否や虚偽報告、立入検査の拒否や妨害
軽微な手続き違反20万円以下の過料物流統括管理者の選任や解任に関する届出義務違反、虚偽の届出

なお、法令には、実際に違反した従業者だけでなく法人に対しても罰則を科す「両罰規定」が設けられています。担当者個人の問題にとどまらず、会社全体に法的責任が及ぶため、組織的なコンプライアンス管理が求められます。

一方で、積載効率の向上や荷待ち時間・荷役時間の短縮といった努力義務の規定に対しては、直接的な罰則は設けられていません。努力義務を達成できなくとも、ただちに処罰の対象となるわけではないためです。

実務上、特に注意すべきなのは、中長期計画や定期報告の未提出および虚偽記載です。最も重い100万円以下の罰金は、明白な義務違反が対象であり、通常の実務対応を行っていれば回避できます。物流統括管理者の選任と中長期計画の提出を適正に完了していれば、突発的に重い処分を受けることはありません。まずは、この2点を確実に遂行することが重要です。

経済産業省の事例に学ぶ、物流統括管理者(CLO)の組織体制

経済産業省は、法制度への対応が進んでいる企業の取り組みを、優良事例として公開しています。他社が物流統括管理者をどのポジションに配置し、どのように組織を動かしているかを確認できる貴重な情報源です。

本記事で紹介する事例は大手企業が中心ですが、選任方法や社内への展開手法には共通のパターンが存在します。業態や事業規模が自社と異なる場合でも、共通のパターンを抽出して当てはめることで、具体的な体制づくりを検討するヒントを得られます。

「CLO取組事例集」の優良9社に見る組織の共通点

経済産業省が公開した「CLO取組事例集」は、計9社の取り組みを紹介しています。具体的には、梅の花グループ、サンゲツ、J-オイルミルズ、SUBARU、ダイキン工業、日清食品、日本アクセス、三菱食品の8社と、特別編のアルペンです。食品や製造、小売と業種は幅広く、自社と同じ業態が含まれていなくても十分に参考にできる構成です。

同省は事例集を作成した背景として、CLOに期待される人物像や業務範囲の共通認識が定着していない点を挙げています。そのため、人選や体制整備に苦慮する企業は少なくないとの見解を示しています。また、社内の理解を促すツールとしての利用も推奨されています。

出典・参考資料

経済産業省の特設ページにて、各社の事例をまとめた資料が公開されています。

物流効率化に向けた取組(経済産業省)

※リンク先のページ下部より「CLO取組事例集」のPDFがダウンロード可能です。

アプローチが異なる先行3社の体制比較

3社の取り組みを比較すると、選任方法や組織体制の構築手法には明確な違いがあります。しかし、それらの違いを超えて共通しているのは、「役員クラスが物流を経営課題として扱う体制を整備した」という点です。

まず、各社の取り組みを以下の表で整理します。

企業名業種物流統括管理者の配置手法成果の一例
ダイキン工業製造SCM部担当役員が物流の総責任者としてCLOに就任し、専門部隊である物流本部長が実務を補佐パレット輸送の標準化により、積載効率を24パレット/車から28パレット/車へ改善
SUBARU自動車製造物流本部を新設したうえで、物流統括管理者を先行して配置全社的な視点で物流改革を推進する組織体制を構築
三菱食品食品卸経営層のトップダウンによる強力な推進体制物流を経営資源として再定義し、可視化と最適化を全社規模で推進

各社のアプローチは異なります。ダイキン工業は「方針と実行」の役割を明確に分担し、SUBARUは改革の基盤として物流本部を新設しました。また、三菱食品はトップダウン体制で物流を経営資源として再定義しています。

これら3社に共通するのは、物流統括管理者を単なる「物流部門の管理者」にとどめていない点です。いずれの企業も、経営層が物流全体をコントロールする起点として、この役職を位置づけています。

荷主と物流事業者の両面を見渡し、全社横断でコストや効率を改善する。こうした「経営陣が期待する役割」が、実際の組織体制へそのまま反映されている好例だといえます。

新任者が着手すべき「データの棚卸し」

ここからは、新任者のための実践ポイントについて解説します。物流統括管理者が最初に着手すべき行動は、データを「探す」ことです。

まずは、社内に点在する既存データを棚卸ししましょう。WMSやTMS、伝票、請求書、業務日報といった手元の情報を集約するだけで、物流の全体像をおおむね把握できます。続いて、不足している情報を手作業で補足します。システムの自動化を検討するのはその次の段階です。手作業で一定の効果を確認したあとに、本格的な仕組みを整備すれば足ります。

初期の管理ダッシュボードへ設定すべき指標は、主に5つ挙げられます。具体的には、「物流費」「荷待ちや荷役等の時間」「トラックの台数と積載率」「ユニットロード比率」「安全に関するKPI」です。自社の物流データが、現在社内のどこにどれだけ眠っているのか。これらの情報を棚卸しして可視化することが、物流統括管理者の実務の出発点です。

物流統括管理者の義務化に向け、自社が踏み出すべき次の一歩

自社が規制の対象であるかを判断する起点は、荷主区分(第一種・第二種)と年間の委託貨物量です。自社の貨物量を「年間9万トン」という基準と照らし合わせることで、対象に該当するかどうかが明確になります。

対象であることが確認できれば、次に行うべき対応も自然に絞り込めます。特定荷主の届出、物流統括管理者の選任、中長期計画の策定、そして定期報告の提出です。これら一連の手続きを把握しておくことで、社内における準備を具体的に進められます。万が一対応を怠ると、勧告や命令といった行政措置に発展します。さらに、違反内容によっては罰則の対象となる恐れもあるため注意が必要です。

本記事の解説は、単に法制度を理解するためだけのものではありません。担当者が社内で自らの言葉で説明し、組織を動かすための土台として活用してください。対象の確認から担当者の選任に至るまで、一つひとつの判断に確かな根拠を持ち、着実に実務を進めていきましょう。

この記事を書いた人

Webライター・編集者/福岡。LPガス配送27年を経て独立し、企業メディアの記事構成・執筆やホワイトペーパー制作を手がける。一次情報の裏取りと出典明記を大切にしています。上級ウェブ解析士/運行管理者〈貨物〉。

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